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| 古典落語に独自のアレンジをほどこし、独自の世界を展開する快楽亭ブラック。当サイトでは、落語会「浜松町かもめ亭」における最新音源や、独演会での秘蔵音源を独占配信。スパイスの効いたブラック落語の世界をどうぞご堪能ください。(2008年3月15日掲載) |

英国密航 |
ときは幕末。尊皇攘夷に傾く長州藩の毛利侯は家臣の井上聞多を呼び出し、英国への渡航を命ずる。当時、日本と英国には公式の国交は無かったが、殿様はいずれ西洋の国と闘うときが来るであろうと予測し、そのための敵情視察をせよという狙いである。ただし、海外への渡航は幕府の固い御法度。もし露見しても長州藩は責任を取らぬと言う危険な計画である。井上聞多は同じく長州藩の志士、野村弥吉、山尾庸三、遠藤謹助を誘い、江戸へあがり、さらに長州藩江戸屋敷の足軽、伊藤春輔を一味に加え、英国密航の策を練る。まずは江戸屋敷のお留守居役、村田蔵六を口説き、五千両もの軍資金調達に成功。さらに横浜の貿易商、マジソン商会に話を通し、秘密裏に船で英国に向かうことにする。そしてついに船出の日がやってくる。五人を乗せたキロセッキ号は横浜港を船出し、一路英国を目指す。五人の運命やいかに・・・。
この「英国密航」のエピソードは実話で、五人は無事に渡航成功。数年後、日本に帰国し、明治維新を経て、井上聞多(井上馨)は明治政府の外務大臣に、野村弥吉、山尾庸三は高級官僚に遠藤謹助は大阪造幣局初代局長に、そして伊藤春輔は伊藤博文と名を改め明治新政府の初代内閣総理大臣になった。近年では浪曲師、広沢瓢右衛門が持ちネタにしていたこの噺を、快楽亭ブラックが落語に翻案、十八番にしている。(落語台本執筆は小佐田定雄氏)浪曲の聴かせどころである横浜港からロンドンまでの道中付けをブラック版ではオミットし、代わりに「白浪五人男 稲瀬川勢揃い」のパロディで、「テムズ河河畔の場」を増補。歌舞伎に造詣が深い快楽亭ブラックならではの名場面になっている。ほかにも、真山青果ばりの弁舌場面や、時事ネタを盛り込んだギャグもあり、53分間、まったく飽きさせない。ブラック落語の大傑作! |
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蛙茶番 |
今日は町内の連中が集まって素人芝居。素人芝居に付き物の「役揉め」で、“舞台番”役の半ちゃんが姿を現わさない。「町内一の芸人」を自負する半ちゃんは役者志願だったのに、舞台番をあてがわれスネているのだ。頭の働く番頭さんの計略で、「半ちゃんが岡惚れしている仕立屋のみぃ坊が、半ちゃんの舞台番姿を楽しみに芝居を見にくる」と持ち上げて、何とか半ちゃんを呼び出すのには成功する。しかし、緋縮緬の真っ赤な褌を締め、それを観客に見せて注目を自分に集めようと考えた半ちゃんが、肝心の褌を風呂屋の脱衣場に忘れ、下半身がスッポンポンなのに気づかないまま、舞台に姿を現わした・・・!
江戸時代から伝わる艶笑落語の傑作。素人芝居を巡るテンヤワンヤだから、落語界きっての歌舞伎大好き人間の快楽亭ブラックにはうってつけ!最後の素人芝居の場面では「芝居見たまま」同様、『天竺徳兵衛』を楽しそうにタップリと演じている。 |

権助魚 |
舞台はある商家。近頃、旦那の様子がおかしいというので、奥様が下男の権助を座敷に招き入れ話を聞こうとする。権助に一円という小遣いをやり、旦那の供をして愛人の居所を突き止めろという奥様。そうこうしているうちに、旦那が日本橋の丸安さんとの商談で出かけるという。権助はむりやり供について行く。旦那の行く先はもちろんお妾さんのところ。権助がいてはじゃまなので、旦那は二円という小遣いを出し「旦那と丸安さんは柳橋のお茶屋にあがってお座敷遊び。そのあと網文という船宿から船を出し、網打ちをして遊んだ。今夜はそのまま湯河原に遊びに行ったので帰らない」と報告しろと言う。そして、話を信用させるために魚屋で網取り魚を買って帰り、女房に見せろと言う。二円の金で買収された権助は、その足で魚屋に向かい、魚を買うが・・・。
商家のおかみ、旦那、下男の権助という三人の思惑が交錯する面白い噺である。快楽亭ブラックの口演は古典落語をベースに、時事的なギャグもまじえ、よく工夫されている。権助の木訥な人間性、おかみの表面には出さない静かな嫉妬心など描写も的確で盛り上がる。 |

おしくら |
江戸っ子の3人連れが伊勢詣に上方見物を兼ねた物見遊山の旅に出て中仙道の旅籠に投宿。酒の酌をした15歳と18歳、2人の女中に「この宿に夜のお相手をする女はいないか?」と聞くと、自分たちが「押しくら」と呼ばれる私娼を兼ねているという嬉しい返事。ただし、いつもは3人いるが、1人は宿下がりで今晩は2人だけで、ほかには「76歳の尼さんしかいない」という。これを聞いた江戸っ子の兄貴分は相棒の半ちゃんに、「江戸で以前、芸者だった粋な年増が相手をしてくれるが、18歳の女中と、どっちがいい?」と持ちかけた。“元芸者の粋な年増”に目の色が変った半ちゃん。「オレが年増の方に行きてえな!」と熱烈志願!年増が1人で待つ真っ暗な離れ座敷に向かうが・・・。
古くからある旅の落語『三人旅』を締めくくる艶笑譚が『押しくら』。「旅の恥は掻き捨て」と、男が旅先で女遊びに走るのは今も昔も変わらない。戦後の東京落語界では六代三遊亭目圓生・五代目柳家小さんの持ちネタだった『押しくら』は、元々上方の長い旅ネタ『東の旅』の一部で、『浮かれの尼買い』という題名。“粋な年増”というフレーズに、乗せられた半ちゃんが翌朝、ダマされた怒りをぶつける辺りが最高に楽しい一席。 |
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転失気 |
あるお寺の住職、腹具合が悪いのでお医者さんを呼んで看てもらった。帰りがけ、お医者さまが「ときにお住持、テンシキはありますか?」と訊ねる。住職は「テンシキ」という言葉の意味がわからなかったが知ったかぶりをして「・・・いや、ございません」と答えてしまう。お医者様はそのまま帰るが、住職は気になってしょうがない。小僧の弁長を呼びつけ、「おまえはテンシキという言葉を知っているか」と質問。弁長が「知らない」と答えると「馬鹿者。だからおまえは修行がおろそかなのだ。このあいだ教えたばかりではないか。これからご近所の花屋さん、八百屋さんに行ってテンシキを借りてきなさい。そしてしっかりと覚えるのだ」と理不尽な小言。小僧の弁長は言われたとおりに出掛けるが・・・。
テンシキは漢字で「転失気」と書く。(その意味、由来はお医者様の口から明かされるので噺を聞いてください)滑稽噺の小品としてポピュラーな噺である。民話的な雰囲気もあり、落語の入門にもうってつけの一席。ブラックはのどかな口調で、楽しく聴かせてくれる。また、枕で四季折々の「おなら」に関する戯れ歌や、徳川将軍が元旦、諸国大名を集めた年始の儀で放屁をしてしまい、それを御三家(水戸、尾張、紀州)の大名がどう誤魔化したかなど古風な小咄を披露。貴重な口演である。 |

山崎屋 |
日本橋横山町にある鼈甲問屋「山崎屋」の若旦那は吉原の遊女にいれあげ、ろくに家にも居着かない。これには大旦那もご立腹だが、若旦那はどこ吹く風で番頭に遊ぶ金を無心する。番頭はとんでもないと怒り出すが、若旦那には策があった。じつはこの番頭、以前から店の金を使い込み、隣町に年増の妾(愛人)を囲っていたのだ。その証拠を掴んでいる若旦那は番頭を逆にやりこめ、味方に付けてしまう。相談の末、吉原に通い続けるよりは、いっそ意中の遊女を身請けして、所帯を持った方が得策だと番頭。しかし、堅物の大旦那は遊女を嫁入りさせるなど、許すはずがない。そこで番頭が仕組んだ仕掛けとは?
商家を舞台にした、お店(たな)ものの大作である。みっちり演れば一時間もある大作。、快楽亭ブラックの口演では若旦那と番頭が策を練る前半が面白い。ともに遊びを本意にして生きている人間であり、特に番頭のキャラクターは、堅物、遊び人、策士・・・とだんだんに深みを増す。遊びの世界に通じたブラックならではの味を楽しみたい。 |
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